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第21話 でも、もう遅い。

last update publish date: 2026-05-19 20:08:26
 離婚はしない。

 真尋の体は、御門のものじゃない。

 聞きたかった言葉だった。

 本当にうれしいと思ってしまった。

 でも、もう遅い。

 昨日までの沈黙も、離婚届を渡された日の痛みも、今さらなかったことにはできない。

 義母が、ゆっくりと笑った。

「ずいぶん、真尋さんの味方をするのね」

 怒鳴るより、ずっと冷たい声だった。

「あなた、香澄の時のことを覚えているから、そんなふうに言うの?」

 その名前が出た瞬間、食卓の温度が変わった。

 香澄さん。

 妊娠して、何かが起こり、この家の表から消えた朔弥さんの姉。

 澄麗だけが、不思議そうに目を瞬かせていた。

 香澄さんの名前が落ちた時の沈黙だけは、まだ知らないのだ。

「香澄は弱かったのよ。子どもを失ってから、ずっとおかしくなった」

 息が止まった。

 子どもを失ってから。

 あの淡い黄色の母子手帳ケースが、胸の奥で開いた気がした。

「違う」

 朔弥さんが言った。

 聞いたことがないくらい、低い声だった。

「姉さんが弱かったんじゃない」

「では、何が悪かったと言うの」

 朔弥さんは一度だけ息を
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